仁司はこれまでに感じたことのない、否、久しく感じることのなかった感覚に満足感を覚えていた。
 そう、かつて仁司が栄華を失ったあの時から感じることのなかった充足感を。
 結局昨晩は恵の部屋に泊まることにした。無論、奴隷たる恵が文句など言おうはずがない。
 その牝奴隷は今、隣の部屋で仁司を想っての自慰行為に浸っている。
 出社前に出社時に履いていく下着で自分をおかずに十回イけと命令したのは当然仁司である。
 朝になってようやく、あの薬――Ep03の効き目の凄さに仁司は感嘆した。
 信じていなかったというわけではない。
 昨晩は興奮していたために気付かなかったが、実際にその効果を目にしてみれば想像など遥かに上回るものだった。
 これは一体何なのか、魔女は一体何者だったのか。何度となく湧いた疑問が再び湧いてくる。
 だが、そんなことは些事に過ぎない。大切なのは彼女がくれたこの力。
 Ep03というあまりにも強力な『力』を得た仁司の欲望は最早、恵に対する報復だけでは留まらない。
 これまで自分を見下してきた園部真紀、そして山脇亜希子の二人を、いや、社内の女共全てを自分のモノにしたいとそう思っていた。
 全能感。
 人の心を操る術を得た仁司は、自分が神にでもなったかのような、言いようのない全能感を感じていた。





 今日は金曜日、決行は今夜、そう決めた仁司は他の社員達に気付かれないように恵にメールを送った。
 内容は真紀と亜希子の二人を今夜、家に誘えというものだ。
 仁司の目論見は成功し、真紀も亜希子も家で飲むことを了承したという旨の連絡が仁司に届いた。
 相も変わらず悪口を言い続ける二人を見て、内心でほくそ笑みつつ、昼休みには二人の代わりにと言って男子トイレで恵に罰を与えた。
 午後は昨日同様、仕事に打ち込んでいると定時はすぐにやってきた。
 気の持ちようで時間の流れの感じ方は変わるというが、昨日今日と仁司はまさしくそれを実感していた。
 退社後、恵の家で飲み会が行われているのを知りつつ、仁司は股間を膨張させてすぐ先の未来を夢想する。
 恵から聞いていた通り、明日は土曜で休みだからと真紀と亜希子は恵の家に泊まることにしたらしい。
 予定通りだ。
 恵から真紀が寝たという連絡を受けた仁司は、恵の部屋へと向かった。
 五分ほどで到着した仁司が目にしたのは、両手両足を縛られた亜希子の姿だった。
 むー、むー、と、何かを言おうとしてはいるのだが口に詰められた下着がそれを許さない。
 その下着が、恵の愛液と自分の精液が染み付いたものであると理解し、仁司は興奮を一層強める。
 見下ろすような形で亜希子を見据える。
 圧倒的に優位な立場からくる優越感は、それまで虐げられてきた不満を解消するのに充分なものだった。
「よくやった恵。あとでご褒美をあげよう」
「ありがとうございます。ご主人様」
 この世の至福と言わんばかりに欲情した瞳で心の底からの感謝を告げる恵。
 その秘部は既に、後ほどの褒美を期待して愛液に濡れていることだろう。
「真紀の方も同じように手足を縛っておけ」
「はい」
 恭しく頷くと、恵は隣の部屋へと向かう。
 それを確認すると、仁司は改めて亜希子の顔を見る。
 その顔に浮かんでいたのは信じられないと言わんばかりの驚愕の表情。
 だが、そんな表情を浮かべるのも無理もないだろう。仁司をアレだけ毛嫌いしていたはずの恵が、その命令に恭しく従っているのだから。
「お前たちはいつも僕の悪口ばかり言ってたから調教してあげようと思ってね」
 ゆっくりと顔を近づけていき、仁司は亜希子の頬を舐める。
 ぶるりと亜希子が身震いをし、反抗の言葉を吐こうする。しかし、そんなことはお構い無しに仁司は亜希子の服を捲り上げると、淫猥な大きさの乳房がその姿を露にする。
「いやらしいおっぱいじゃないか。でも大丈夫、僕はこんないやらしいおっぱいでも好きだからね」
 ブラを剥ぎ取り、乳房に吸い付く。
 柔らかい感触を舌で感じながら仁司は我慢の限界を迎えていた。
 そう思っていると、完全に拘束された真紀が恵の手によって連れてこられる。
 部屋に着くと、真紀はそのまま床に転がされる。親友のはずの真紀に対しても、その扱いは粗雑に過ぎる。
 今の恵にとっての真紀や亜希子は、主人のことを嫌う憎むべき存在なのである。
「ちょ、ちょっと恵、どうしちゃったのよ! そんな奴の言うことなんで……」
 真紀の言葉は最後まで言いきられることはなかった。
 それを遮るように、恵のかかとが真紀の鳩尾を踏みつけたからだ。
「めぐ、み……」
「五月蝿いわね、黙ってなさいよ。でも安心して、アンタみたいなクズでもご主人様は奴隷にしてくださるらしいから」
 恵の言葉に、驚愕を貼り付けたまま沈黙する真紀。
 仁司はその表情に最高の愉悦を感じながら、恵に視線を向ける。
「真紀、お前は後回しだ。友達が僕のモノになる姿を目に焼き付けると良い」
 そう言って仁司はいやらしい笑みを浮かべる。
 三人の中で、最も積極的に悪口を言っていたのは真紀だ。仁司にとっては亜希子よりも真紀への恨みの方が強い。
 だからこそ、亜希子を先に。友人が目の前で変わっていく姿を見せ、絶望を与えるために。
 考えるだけで笑いが零れてくる。
「じゃあまずは亜希子……君からだ。恵」
「はい」
 そう言って仁司が亜希子の上から退くと、入れ替わるようにして恵が亜希子へと跨る。
 躊躇ない様子でEp03の入った小瓶を開き、仁司は中の薬液を口に含む。
 そして亜希子の口を塞いでいた下着を口から外すと、亜希子が罵声を放つ間もなく、開いたままの口に自分の唇を重ねた。
 口から口へと移される薬液。その間も恵の舌は亜希子の口内を蹂躙していく。
 亜希子の喉が嚥下の動きを見せたのを確認すると、恵が亜希子の上から退く。
 親友の行為にただ驚いてばかりの亜希子は、叫ぶことも出来ずにいた。
 恵は満面の笑みのままに亜希子の恥部へと指を這わせる。ゆっくりと愛撫を続け、湿り気を帯びてきたところで止めた。
 仁司のズボンのチャックを開け、いきり立った逸物を口に含み、口淫を行う。
 たっぷりと唾液に濡れた肉棒が精を放つ前にその行為は止められた。
 仁司は恵の秘部へと手を入れると、既にそこは事後と区別が付かないほどの愛液で濡れそぼっていた。
「舐めるだけでこんなに濡れるなんて、いやらしいなぁ恵は」
 卑猥な笑みを浮かべて恵を見下す仁司の心には、この上ない優越感が生まれていた。
 もっと、もっと、と。底のない欲望が更なる支配を渇望する。
「じゃあ、亜希子、君も僕の奴隷にしてあげるよ」
「なに、を、言ってるの? バカじゃないの? そんなのになるわけないじゃない! 私達が警察に行ったらもうアンタは終わりなんだからね!」
「まだ君は理解できてないみたいだね……まぁいいか。すぐに君も僕の奴隷になる。恵みたいにね」
 仁司が目配せをすると、従順に頷いた恵が亜希子の下着をずらし、その濡れた秘部に仁司を誘う。
 既に我慢の限界を超えていた仁司はすぐさまそのいきり立った肉棒を亜希子の秘裂へとあてがい、貫く。
 真紀が抗議の言葉を言おうとしているのを気にも留めず、仁司は挿抜を開始する。
 充分な締め付けを持った亜希子の蜜壷に仁司の逸物は容易くその限界を迎えた。
 その予感を感じ取ったのだろう、亜希子はあらん限りの力で抵抗を試みるも、男女の差はどうにもならず、仁司は白濁した欲望の塊を亜希子の膣内へと注ぎ込む。
 効果はすぐに現れた。嫌悪に歪んだ亜希子の表情が、意思を失ったかのように無表情へと変わっていく。
 それを見た仁司は満足げに亜希子から逸物を抜いた。欲望の詰まったそれは、一度吐き出しても尚、まだまだ硬度を失わずいきり立っていた。
 続いて恵が亜希子の耳元で囁く。
「亜希子、アナタは奴隷。ご主人様の奴隷よ。いつでもどんなところでも発情するどうしようもなく淫乱な牝奴隷」
「わたしは、どれい、いんらんな、どれい……」
 うわごとのように復唱する亜希子。
 それを確認した恵は仁司の用意したバイブレーターを亜希子の秘裂へと突き入れた。
 情け容赦のない激しい挿抜に、亜希子が絶頂を迎えるのはそう時間も掛からなかった。
「亜希子、君は何だ?」
 仁司の問い掛けに、意識を戻した亜希子は、これまでにないほどに淫蕩な笑みを浮かべる。
「私はご主人様のいやらしい牝奴隷です。これまでの失礼な発言をどうかお許しください」
 その発言が甘露の一舐めとでも言うかのようにうっとりと宣言する亜希子。
 恵がその拘束を解くと、つい今、絶頂を迎えたばかりだというのに、亜希子は発情期の猫もかくやといった様子で自らの秘部をバイブレーターでかき混ぜ続ける。
 時折絶頂を迎えるのか表情を歪ませるが、それでも満足しないようで自慰行為を続けていた。
「さて、最後は真紀……君だ。本当に君はいつもいつも僕の悪口を言っていたね。そんな君が僕に従順な牝になるのがとっても楽しみだよ」
 今までで最高の充実感を感じながら、仁司は真紀を見下していた。





 怖い。
 ただただひたすらに恐ろしい。
 真紀の思考はそれだけで埋め尽くされていた。
 恵は、ゴキブリか仁司と問われて迷いなくゴキブリの方がマシと答えるほどに仁司のことを嫌っていたはずだ。
 そんな彼女がうっとりとした様子でその仁司に従っている。
 初めは何か、脅されているのかとも思った。しかしその言動は脅されている者のそれではなく、心の底から充足感を味わっているかのように思える。
 だからこそ、恐ろしい。
 それについ先程まで罵倒していたはずの亜希子も、人が変わったかのように自慰を続けている。その表情は今まで見た彼女のどんな表情よりもいやらしいものだった。
 異常。
 一言で言ってしまえば、この状況はそう言う他になかった。
 恵が変わり、亜希子が変わり、次はもう自分しかいない。
 仁司に犯されるということ以上に、自分が変えられてしまうのではないかという恐怖の方が遥かに勝っていた。
 真紀が恐怖に打ち震えていると、仁司が何かを二人に告げていた。
 あまりの恐怖に五感が十全に機能しない。何を話しているのか聞き取ることすらもできない。
 亜希子が今まで自分で使っていたバイブレーターに、何かを塗りたくっていた。
 それが先程、亜希子がああなる前に恵に口移しで飲まされた薬と同じものであるということを理解するだけの余裕はもう真紀にはない。
 恵に舐められ、充分に濡らされた淫裂にバイブレーターが押し込まれる。
 亜希子はまるで自分がオナニーをしているかのようにバイブレーターを真紀の膣内で暴れさせる。
 真紀の身体も、このあまりに異常な空間に興奮しているのか、乳首は勃起し、先程までよりも明らかに多い淫蜜が秘裂からは溢れ出していた。
 自分のすぐ横で、仁司が仰向けになった。何が起こるのかと疑問に思った真紀はすぐにその疑問への答えを知る。
 両側から、恵と亜希子に抱えられた真紀は、両足の拘束は外されたものの、二人に抱えられて逃げることなど出来ない。
 真紀の恐怖を更に強めるように、ゆっくりと自分の身体が、仁司の逸物へと近付いていく。
 秘裂に仁司の汚らしい肉棒があてがわれる感覚、そして自分がそれを飲み込む感覚に、真紀は嫌悪以外のものを感じない。
 仁司が腰を動かし始める。真紀を支える二人もそれに合わせて動きはじめる。
 少しずつ加速していくストロークに、真紀は最早抵抗する意欲もなく、ただ恐怖感のみを感じる。
 両側の、かつての親友はいやらしい表情を浮かべて真紀を上下させながら乳首やクリトリスなどを的確に攻めてくる。
 逃げられない恐怖と絶望に囚われながら、真紀は絶頂を迎え、意識を失った。
 その瞬間、園部真紀という人格はある意味で死を迎えた。




 仁司がEp03を手にしてから、半年の時が経った。
 楽園。
 仁司の視点で、その感性でこの部屋のことを表せば、まさしくその一言に限る。
 今、この部屋にいるのは仁司自身を除けば女性社員ばかり、どころか、女性社員のみだ。
 しかもその格好も尋常ではない。
 全裸の者からスクール水着を着る者、メイド服を着る者にボンテージ服を着る者。その他、どこのイメクラかと問いたくなるほどに多種多様な、かつ卑猥な異装の美女たちがこの部屋には揃っていた。
 珍しくごく普通の服を着ているかと思えば、その股間からはモーター音が響き、ストッキングには淫蜜が流れているという有様だ。
 それも、年齢の幅は明らかに法律に違反するほどに下に広い。
 時折響く美女、美少女たちの嬌声を聞きながら、仁司にはこの上ない幸福に浸っていた。
 恵に加え、亜希子、真紀という三人の奴隷を手に入れた仁司はしかし、その欲望を留めることなく更に拡大させた。
 手始めに行ったのは他の女性社員達の洗脳だ。三人の奴隷たちを巧みに利用することで、社内全ての女性社員を洗脳することが出来た。
 続いて行ったのは男性社員達の洗脳。これも洗脳した女性社員達を使うことで、容易に全てを洗脳させることが出来た。
 仁司に男色趣味が芽生えたわけではないが、この会社を自分だけのためのものとするためにはその手間が必要だったのだ。
 一度に洗脳できるわけでもないために、会社の社員全てを洗脳するのに半年もの時間が掛かってしまったが、もしこの会社が大企業であれば半年では済まなかったことだろう。
 そうして洗脳した社員達は、美しい女性社員はこの部屋で淫らに踊り、仁司の美的センスにそぐわない女性社員、及び男性社員は社の業績向上のために、体調を崩すことのない限界のラインで、自分の時間など一切作ることなくただひたすらに働き続けている。
 そんな、文字通り身を犠牲にした就業によって、社の業績はこの大不況にも関わらず、僅か半年にして驚くべきほどの向上を見せている。
 そして今、仁司の欲望は次のフェイズへと移行していた。
 この半年で仁司がEp03について知ったことはそれほど多くなかった。
 一つに、交合するとはあるものの、それは異性同士である必要はない。同性によるものでも、体液の交換さえ行われれば効果があるということ。
 そしてもう一つ、こちらがまさに仁司を驚かせたのだが、Ep03は一つの分子によるものであり、それも水素原子一つと酸素原子が二つ結合した、即ち水と全く同じ物だったということだ。
 試しにただの水で行ってみたところ成功するはずもなく、あやうく警察に通報させそうになったところを今度は本物のEp03によって洗脳を施し、事なきを得た。
 結局のところわかったのは、違うのは中の物質ではなく、Ep03の入っていた薬瓶だったということだ。この中に注いだ液体は、その全てがEp03と同じ効果を示した。理由などわかろうはずもないが、実際に効果がでており、しかも実質薬量が無制限となったのだから仁司に文句などあるわけもなかった。
 目の前では美少女、そう言って過言ではない少女を、女性社員達が囲み、犯している。
 彼女はこの会社の社員ではない――そもそも入社してくるにしてもあと六年は必要だろう――彼女は、社員である男性の娘だ。
 仁司は洗脳した男性社員達に自分の妻子の写真を持ってこさせ、自分の眼鏡に適った者はたとえ何歳であろうと社へと呼び、そして洗脳を施した。
 今もまた、そうして呼ばれた被害者たる少女が拒絶の言葉を叫びながらもその抵抗は実っていない。
 しかも、助けを求めてられている父親は妻以外の女性と猿のように交尾を続け、母親の方は仁司の上で淫らに腰を振っている。
 これも勿論、仁司のアイディアだ。抵抗の意思が残っている内に絶望を味あわせてやろうと、わざわざこのようなシチュエーションを用意した。
 あと少しすれば、涙に濡れた少女の顔には愉悦と淫らな笑みが浮かぶようになるだろう。
 少女の母親の膣内へと精液をぶちまけながら、仁司は次はどんな趣向を凝らしたものかと思案に耽っていた。
 その欲望は留まることを知らない。


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