第伍話『拒絶』


 人間何よりも第一印象が大切。出会って早々無愛想な表情で無言では良い印象など受けられはしない。
 だから、と、ウズメは眼を開けた少女の前に顔を出し、起き掛けの挨拶をする。
「おはよう」
 目を覚ました少女――三嶋皐月は自分に何があったのか、どうしてこんなところで寝ているのかに疑問を抱いているのだろう。
 無理もない。サダヒコの逆鱗に触れてしまったばかりに衝動的に強姦されたのだ。
 とはいっても、ウズメの心に浮かぶのは同情の心ではない。
 愉悦。
 今からこの清楚な印象の娘を、淫液の装飾が似合う牝へと変える。そう考えるだけで絶頂してしまいそうなほどにウズメは興奮する。それだけウズメにとって彼女は美味そうな素材だった。
「……あなたは、誰?」
「天野細女。魔法使いみたいなものかしらね。ウズメって呼んでくれていいわよ、皐月ちゃん」
 ウズメの名乗りに皐月は目を細める。
 真っ直ぐな、強い意志を持った瞳。
「天野さん、あなたは何をするつもりですか?」
 名前で呼んではくれないことに僅かに落胆しつつも笑みを浮かべる。
 そもそも、便宜上天野と細女で分けているだけであって、実際はアマノウズメで一つの名前だから姓も名もないのだが。
「人生設計としては終始楽しんでいくつもりだけど、とりあえず目の前の目的としたらアナタの調教かな」
 ウズメは嘘偽りない内心を少女に告げる。
 調教、という言葉にもしかし、皐月の瞳は揺るがない。
「……」
「本当ならお喋りしながらが一番良いんだけど、無理なら仕方ないね。とりあえず、っと」
 無言でこちらを睨み続ける皐月に向けて、ウズメは下準備。
 精神の無意識領域が術式を組み上げる。目的の術式は瞬時に完成。それを皐月に向けて、放つ。
 不可視のソレは以前、貞彦に植え付けたものと似たようなものだ。つまりは欲望の塊。
 だがこれは貞彦に与えたものと全く同じというわけではない。彼に与えたのは多様な欲だったが、彼女に与えたのはただ一つ。
 性欲。
「……ッ」
 皐月は驚いたように目を見開いたものの、それだけ。
 彼女に植え付けた性欲は童女ですら天下の往来で股を開くようにさせられる強力なもので、並の精神力であれば、一瞬で堕ちるはずのものだ。
 それなのに顔色一つ変えない皐月は並ではない。
「ゆとり世代とは思えないほどの意志力の強さね。でも、すぐに悦んで股を開く淫乱に調教したげる」
「……私は、あなたには屈しません」
「そ。一時間後にその意思がどうなってるか楽しみね」
 一時間と告げたのは彼女の精神力に敬意を表してのもの。
 本気を出せばどれだけ意思が強くても、一瞬で堕とすことはできる。でも、そんなことをしては何よりも面白くない。
 だからこそウズメは、ゆっくりと、ゆっくりとその心を折っていくことにする。
「じゃ、はじめるわよ」
 彼女の身体を覆っている邪魔な布を術式によって一瞬で取り除く。
 その下から姿を現すのは美しい裸身。胸に脂肪が少し足りない気もするけれど、スリムなプロポーションだと思えばそれは美点でもある。
 強制的に発情させられたことで頬はうっすらと赤く上気している。
「っ……」
 その控えめな乳房に舌を這わせた瞬間、声にならない小さな喘ぎがあがった。思わず悪戯心が芽生えたウズメは舌に干渉力を集中する。
 感度自体は弄っていないものの、彼女の身体が刺激を欲しているために敏感になってるのだろう。
 口で覆い、舌でその先端を愛撫する。我慢はしているのだろうけどその性感が確かに高まってきているのを感じる。
 そのまま両手と口、全てを使って上半身を愛撫していく。おおよそ上半身全てを唾液で濡らした皐月は、ウズメに恨みがましい視線を向ける。
 この期に及んでその視線。ウズメは自分が極上の獲物を前にしていることを改めて気付かせられた。
「ふふふっ」
 思わず、ウズメの口から笑みが零れる。
 続いて下半身へとウズメは目標を変える。足先から腰、菊門に至るまで全ての場所を舌で愛撫していく。それはもはや、唾液による陵辱ともいえた。
 最後に、唾液で濡らされるまでも無く淫液でふやけた蜜壷へと舌を伸ばす。
 指は菊門へと埋め、透明な牝汁を丹念に舐めとっていく。しかし淫裂から流れ出す愛液は止まることなくウズメの口内を満たしていく。
 満足げな笑みを浮かべ、ウズメはそれを皐月の口内へと流し込む。
「っっっ!」
 それまで抵抗らしい抵抗を見せなかった皐月が驚いたように身をよじろうとするが、それは叶わない。ウズメの術式によって自由を奪われた身体は流し込まれる自分の愛液とウズメの唾液の混じった淫汁を拒むことも出来ない。
 流し込み終えると、ウズメは皐月の鼻を塞ぐ。しばらく経って息の続かなくなった皐月は淫汁を飲まないわけにはいかなくなる。
「ふふっ……いやらしい娘ね」
 挑発するように言って、再びウズメは皐月の股間に顔を埋める。卑猥な音を立てて舐めとられる蜜壷にさしもの皐月も顔を真っ赤にしていた。
 十分、二十分、三十分。ウズメは上から下へと既に残しているところは全くないというほどに皐月の全身を舐め尽していた。
 だが、それ以上は何もしない。昂ぶった身体に絶頂を与えはしない。
「可愛い。本当に可愛い娘……じゃあ、次の段階に入りましょうか」
 そう告げて、ウズメは再び術式を発動する。皐月が大きく口を開き、今にも叫ばんとしたのを、ウズメは自身の唇でその口を塞いだ。口内を舐めまわし、満足したのかウズメは口付けを解く。
「――――ッ!」
 声にならない声が皐月から放たれる。
 ウズメが用いた術式は『干渉力を込めた自身の体液を媚薬化する』という単純なものだった。
 だが丹念に全身を舐め、唾液を塗布された状態からであれば、その効果は抜群だ。
 わざわざ体液としなくとも、そのまま全身を性感帯化させることもできるのだが、それでは面白くないというウズメの遊び心。
 勿論、媚薬自体の効果も生温いものではない。今皐月は全身を性感帯と化し、空気と触れ合うだけでも快楽を感じているだろう。
「気持ちいい? 気持ちいいよね。私のモノになるって誓えばもっと気持ちよくしたげるよ」
「……絶対に、お断りれす!」
「格好いい宣言だけど……呂律が回ってないわよ?」
 口内にも唾液の媚薬はまわっている。ウズメは淫靡に笑って、皐月の乳首を舐める。その瞳が見開かれ、声にならない絶叫を上げる。
 ぺろぺろ、ぺろぺろ、と。
 犬のように、全身性感帯と化した皐月の身体を再び舐めまわしていく。
 時に強く、時に弱く、しかし決して絶頂を与えないように、その絶妙な力加減は悦楽を司る神の眷族としてまさしく相応しいものだといえた。
 その状態から更に三十分。しかし皐月の体感時間はその数倍、否、数十倍だったことだろう。
 下手をすれば精神崩壊を起こしていてもおかしいほどの寸止めの快感に、皐月は歯を食いしばって耐えていた。これには流石のウズメも驚嘆の声を上げる。
「……まさかここまで耐えられるとは思わなかったわ。予定が狂っちゃったじゃない」
「じゃあ、やめれくれます?」
「まさかね。鉄血宰相って、知ってる? 十九世紀のドイツの政治家ビスマルクのことを指す言葉よ」
 世界史でも習う内容だ。しかし、ウズメは別に世界史の授業をしようというのではない。
「彼はあることで有名になった。一方では国民を弾圧するような法を制定しつつ、もう一方で国民のためになる政策を実施すること……アメとムチの政策という奴よ」
 だから、とウズメは笑みを浮かべ、告げる。
「まずはアメをあげる」
 ウズメの服が消滅する。豊満な胸や白磁のような肌が姿を見せ、そしてあるはずのないものまでもがその存在を主張する。
 淫乱なる女神の股間からは男性のソレと比しても全く遜色のない肉棒が屹立していた。
「私達欠片は基本的に両性具有アンドロギュヌス……まぁ、私は女性体だけど、本当は無性存在なのよね」
「それを、どうしゅるつもりにゃの……?」
「可愛いなぁ本当に。口の中まで敏感になっちゃって、喋っただけでイッちゃいそうなんでしょ? 私は止めないわよ? ほら、どうぞ?」
 皐月からの返答が無いと見るや、至極楽しそうに笑う。
「どうするつもりですって? 穴と棒が揃ったんだから、やることは一つに決まってるじゃない……最高の快楽を与えてあげる」
 言い終えるが早いか、ウズメはその肉棒を皐月の蜜壷に押し込む。淫蜜と唾液で充分過ぎるほどに濡れた蜜壷はウズメの肉棒を何の抵抗も無く受け入れる。
 かといって緩いというわけでは勿論ない。狭い膣内をウズメはどんどんと押し込んでいく。既に皐月はこれまでにないほどの圧倒的な快楽を受容していることだろう。媚薬で全身性感帯にされた状態で散々焦らされた上でのこれだ。
 一度のストロークで一回どころではない。押して数度、引いて数度の絶頂が皐月を襲う。
 しかし、ウズメは容赦などしない。悲鳴に近い嬌声を上げる皐月を淫靡な笑みで見据えつつ、その膣内を肉棒で蹂躙していく。
 それを何度も何度も続けるウズメ。しばらくそのまま続けた頃、ウズメにも限界が訪れる。
「ッ……イく、わよ!」
 既に絶頂の回数は三桁に上っているだろう皐月はほとんど虚ろな様子で喘ぎ声を上げ続けていた。
 ウズメの腰が打ち付けられ、その肉棒から大量の白濁が吐き出され、当然の如く、その白濁液も媚薬と化し、皐月の胎内までをも犯していく。
「――――――ぁッ!」
 一際大きな声をあげ、皐月は最大の絶頂へと持ち上げられる。
 そのまま思考が途切れそうになる。気絶しようとする皐月、しかしウズメがそれを許さない。
 術式によって覚醒させられた意識が全身を覆う絶頂感から逃がさない。
 しばらくして絶頂の波が過ぎ去ると、ウズメは皐月の蜜壷から肉棒を引き抜く。
「ひゃっ……」
 抜いた刺激でまた絶頂に達したのだろう、皐月が力ない声を上げた。
「じゃ、次はムチよね……でも、アナタを叩いても今のままじゃ快感しか感じないわよね。それじゃムチにならないもの……このまま我慢しててよ」
「ぇ……?」
「我慢、待て、ステイ、生殺し。どこまでアナタが我慢できるかが見物だわ、皐月ちゃん」
 そう言うとウズメは壁に背をつけて座り込み、にやにやといやらしい笑みを浮かべながら皐月をただ見つめ続ける。
 今の皐月は限界まで引き絞られた弓のようなものだ。あと少し、微かにでも刺激が加われば、張られた弦が切れる。
 そんなギリギリの状態が、三十分。これは既に精神力云々でどうにかなるものではない。
 手足が自由に動くのであれば、恐らく彼女は快楽を得ようと恥も外聞もなく自慰行為に浸っていたところだろうが、ウズメの術式がそれすらも許さない。
 頃合を見計らい、ウズメは皐月の後ろに回る。
「ねぇ、皐月ちゃん……」
「ぁ――あっ――ひゃ――」
 耳にかかる息だけでも快感を感じてしまうのだろう、何を言っているのかわからない口で小さな嬌声を上げる。
「気持ちよく、なりたい?」
 悪魔の問いかけに、皐月は首を小さく、しかし確かに縦に振る。
 満足げな笑みを浮かべたウズメは言葉を続ける。
「どうして欲しいのか言ってみて……いやらしくね」
「わらしのおまんこに……そのおちんぽいれてくらさい」
 従順に、皐月はそう告げた。
「本当に……可愛い娘」
 ウズメは嬉しそうに言葉を紡ぐ。皐月の請願の言葉だけで、肉棒は再び屹立していた。
 皐月の望みどおりにその肉棒を淫裂へと押し当て、貫く。
「ひゃぅっ」
 膣内を満たされ、笑みを浮かべる皐月の表情からは数時間前まで男を知らなかったと窺い知ることはできない。
 ウズメの術式が解かれる。
 身体を束縛するものの無くなった皐月は、更なる快楽を得ようと貪欲に尻を振る。
「気持ちいい?」
「きもちいぃ! いい!」
 何を言っているのか自分でわかっているのかどうかすらも怪しい。壊れた人形のように腰を振り続ける皐月。
 こみ上げてくる精をウズメも感じ取ったのだろう、腰を打ち付けるペースをあげ、自らも淫らな嬌声を上げていく。
「イクッ!」
「なかに、おまんこのなかにいっぱいせーえきらひれぇ!」
 あらん限りの声を張り上げ、二人の淫らな少女は絶頂へと上り詰める。
 ウズメも、皐月の願いに応えるように、その欲望の全てを皐月の中へと解き放った。
「ねぇ皐月ちゃん。私のモノになったら、今みたいの……うぅん、今以上の快楽をいつでも、どこでもあげる」
 ほとんど気を失ったような状態の皐月に、ウズメは問い掛ける。
「私のモノにならない?」
 問い掛けに対して、皐月は答えを返し、意識を失う。それはあまりにも小さくて、言葉になってすらいなかった。
 だがそれでも、ウズメは皐月の唇が紡いだ言葉を読み取った。
 淫らに喘ぎ、おねだりまでしてみせた少女は、それでも拒絶の言葉を返していた。


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